【税務】第135弾 居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の適正化について

 消費税法について平成元年の創設から様々な改正がされてきました。
 今回は、令和2年4月に改正された消費税法の居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除についての内容を説明します。
 この改正については適用開始期間(令和2年10月1日以降に行われる課税仕入れ等)と経過措置(令和2年3月31日までに締結した契約に基づく課税仕入れ等)があります。
 適用開始から1年を経過しましたが、居住用賃貸建物の取得等の時期が決算期未経過の事業者は特に留意が必要となります。

1. 居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限

 事業者が、国内において行う居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物※1以外の建物であって高額特定資産※2又は調整対象自己建設高額資産※3に該当するもの)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととされました。

 ただし、建物の一部が店舗用になっている居住用賃貸建物を、その構造及び設備その他の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分とそれ以外の部分(「居住用賃貸部分」といいます。)とに合理的に区分しているときは、その居住用賃貸部分以外の部分に係る課税仕入れ等の税額については、これまでと同様、仕入税額控除の対象となります。

※1 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物とは、建物の構造や設備等の状況により住宅の貸付の用に供しないことが客観的に明らかなものをいい、例えば、その全てが店舗である建物など建物の設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物が該当します。
※2 高額特定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜)が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。
※3 調整対象自己建設高額資産とは、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の100/110に相当する金額等の累計額が1,000万円以上となったものをいいます。

2. 居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整

 上記1.「居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限」の適用を受けた「居住用賃貸建物」について、次のいずれかに該当する場合には、仕入控除税額を調整することとされました。

(1)第三年度課税期間※4の末日にその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間※5に課税賃貸用※6に供した場合
次の算式で計算した消費税額を第三年度の課税期間の仕入控除税額に加算

(2)その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡した場合
次の算式で計算した消費税額を譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算

※4 第三年度課税期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後の3年を経過する日の属する期間をいいます。
※5 調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいいます。
※6 課税賃貸用とは、非課税とされる住宅の貸付以外の貸付けの用をいいます。
※7 課税譲渡等調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日からその居住用賃貸建物を他の者に譲渡した日までの間をいいます。

3. まとめ等に係る仕入税額控除の制限

 実際に居住用賃貸建物のオーナーとなる事業者は、本体価額に加えて消費税額を支払って居住用賃貸建物を取得しますが、この改正により消費税法については居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額を仕入税額控除されません。
 また、適用開始期間や経過措置などの詳細は税理士にお尋ね下さい。

税理士 水野 雄介

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