【税務】第137弾 研究開発費税制について

 企業のデジタル投資やイノベーションを後押しする税制として試験研究に係る法人税額の特別控除の制度(以下、「研究開発税制」)があります。
 近年の企業のデジタル化や研究開発の状況にあわせて多くの改正が行われており、試験研究費の範囲が拡大されるなど、企業にとって利用しやすい制度となっています。今回は、令和3年4月1日以降に開始した事業年度について説明していきます。

1. 研究開発税制

 研究開発税制は民間企業の研究開発投資を維持・拡大することにより、イノベーション創出に繋がる中長期・革新的な研究開発等を促し、我が国の成長力・国際競争力を強化することを目的としています。
 本制度は「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」、「中小企業技術基盤強化税制」及び「特別試験研究費の額に係る税額控除制度」の3つの制度によって構成されています。
 なお、「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」と「中小企業技術基盤強化税制」との重複適用は認められません。

2. 税額控除制度

(1)一般試験研究費の額に係る税額控除制度
 青色申告法人の各事業年度において、試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額に一定割合を乗じて計算した金額を、その事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。

(2)中小企業技術基盤強化税制
 中小企業者又は農業協同組合等である青色申告法人の各事業年度において、試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額に一定割合を乗じて計算した金額を、その事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。

(3)特別試験研究費の額に係る税額控除制度
 青色申告法人の各事業年度において、特別試験研究費の額がある場合に、その特別試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。特別試験研究費の額は、「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」または「中小企業技術基盤強化税制」の計算の基礎に含めることはできません。

※1. 試験研究費とは、製品の製造もしくは技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用又は対価を得て提供する新たな役務(サービス)の開発に係る試験研究のために要する費用で一定のものをいいます。

※2. 特別試験研究費とは、試験研究費の額のうち国の試験研究機関・大学その他の者(以下「特別試験研究機関等」という)と共同して行う試験研究、国の試験研究機関・大学その他の者に委託する試験研究、中小企業者からその有する知的財産権の設定又は許諾を受けて行う試験研究、その用途に係る対象者が少数である医薬品に関する試験研究費の額をいいます。

3. 税額控除限度額及び税額控除上限額

(1)一般試験研究費の額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制
税額控除限度額は、試験研究費の額に下記図の税額控除割合を乗じて計算した金額となります。

税額控除割合

一般試験研究費の額に係る
税額控除制度
増減試験研究費割合
・9.4% 超:10.145%+{(増減試験研究費割合-9.4% )×0.35}(14%を上限)
・9.4%以下:10.145% -{(9.4% -増減試験研究費割合)×0.175}(2%を下限)
・設立事業年度である場合又は比較試験研究費の額が0である場合:8.5%
*試験研究費割合が10% を超える場合
上記割合+ (上記割合×控除割増率)
控除割増率=(試験研究費割合-10%)×0.5
中小企業技術基盤強化税制増減試験研究費割合
・8%超:12%+{(増減試験研究費割合-8% )×0.3}
・8%以下:12%
*試験研究費割合が10%を超える場合
上記割合+(上記割合×控除割増率)
控除割増率=(試験研究費割合-10%)×0.5

 税額控除限度額がその事業年度の調整前法人税額の25%に相当する金額を超える場合には、その25%に相当する金額が税額控除上限額となります。
 ただし、その事業年度が研究開発を行う一定のベンチャー企業に該当する事業年度又は試験研究費割合が10%を超える事業年度に該当する場合には、その25%に相当する金額にそれぞれ一定の金額を加算した金額が、その事業年度の税額控除上限額となります。
 また、コロナ前(2020年2月1日より前に終了する事業年度)と比較し、売上が2%以上減少しているにも関わらず、試験研究費を増加させる場合は、税額控除上限額が5%引上げされます。

(2)特別試験研究費の額に係る税額控除制度

 税額控除限度額は特別試験研究機関等との共同研究又は特別試験研究機関等への委託研究に係る一定の試験研究費の額の30%に相当する金額、一定の試験研究費の額の25%に相当する金額、特別試験研究費の額のうち一定の試験研究費の額以外の金額の20%に相当する金額の合計額です。
 税額控除限度額が、法人のその事業年度の調整前法人税額の10%に相当する金額を超えるときは、税額控除上限額は、その10%に相当する金額となります。

4. おわりに

 本制度の適用を受けるためには、控除の対象となる試験研究費の額(2(3)の適用を受ける場合は特別試験研究費の額)及び控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。制度の詳細は税理士にお尋ねください。

大澤 輝高

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