労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、令和5年4月以降、中小企業に対しても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、現行の25%以上から50%以上に引き上げられます。
今回の改正により、労働者を1人でも雇用している事業所は対象となり、影響も大きいため、今から準備されることをお勧めします。
◇改正のポイント
中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%になります。
4月1日から労働させた時間について、割増賃金の引き上げの対象となります。
1ヵ月の時間外労働 (1日8時間・1週40時間を超える労働時間) | ||
60時間以下 | 60時間超 | |
大企業 | 25% | 50% |
中小企業 | 25% | 25% |

1ヵ月の時間外労働 (1日8時間・1週40時間を超える労働時間) | ||
60時間以下 | 60時間超 | |
大企業 | 25% | 50% |
中小企業 | 25% | 50% |
中小企業に該当するかは、①または②を満たすかどうかで企業単位で判断されます。
業種 | ①資本金の額または出資の総額 | ②常時使用する労働者数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
上記以外のその他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
◇深夜・休日労働の取扱い
- 深夜労働との関係
月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。 - 休日労働との関係
月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。
(※)法定休日労働の割増賃金率は、35%です。
◇代替休暇
月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため引き上げ分の割増賃金の支払の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。
代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。
安全衛生推進者等の選任
最近、労働基準監督署の調査において、安全衛生推進者等の選任について指摘を受けることが多くみられますので、今月号で取り上げます。
労働者数10人以上50人未満の事業場は、業種に応じ安全衛生推進者または衛生推進者を選任し、事業場の安全衛生管理等を担当させることが必要です。
◇安全衛生推進者等の選任
- 安全衛生推進者、衛生推進者のいずれを選任しなければならないかについては、次の表の区分による。
安全衛生推進者 | 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 |
衛生推進者 | 上記以外の事業場 |
- 安全衛生推進者又は衛生推進者は、それぞれの業務を担当するため必要な能力を有すると認められる者のうちから選任することとされており、必要な能力を有すると認められる者として、大学又は高等専門学校を卒業した者で、その後1年以上安全衛生の実務(衛生推進者にあっては衛生の実務)に従事した経験を有する者等とされている。
- 選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならない。
- 選任したときは、氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。
◇安全衛生推進者等の職務
安全衛生推進者又は衛生推進者の職務は、具体的には次のようなものであること。
- 施設、設備等(安全装置、労働衛生関係設備、保護具等を含む。)の点検及び使用状況の確認並びにこれらの結果に基づく必要な措置に関すること。
- 作業環境の点検(作業環境測定を含む。)及び作業方法の点検並びにこれらの結果に基づく必要な措置に関すること。
- 健康診断及び健康の保持増進のための措置に関すること。
- 安全衛生教育に関すること。
- 異常な事態における応急措置に関すること。
- 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
- 安全衛生情報の収集及び労働災害、疾病・休業等の統計に関すること。
- 関係行政機関に対する安全衛生に係る各種報告、届出等に関すること。
障害者雇用 法定雇用率 段階的に引き上げへ
障害に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念の下、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)。
法定雇用率について、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上がることとなりました。
事業主区分 | 法定雇用率 | |||
現行 | 令和5年4月以降 | 令和6年4月以降 | 令和8年4月以降 | |
民間企業 | 2.3% | 2.3%据え置き | 2.5% | 2.7% |