【税務】第152弾 贈与税の令和5年度税制改正について

 今回は贈与税の令和5年度税制改正より暦年課税、相続時精算課税、教育資金の一括贈与及び結婚・子育て資金の一括贈与について説明します。

1.暦年課税

 相続開始前3年以内に相続人に対して贈与された財産は、相続財産に加算して相続税を計算しますが、その対象期間が相続開始前3年から相続開始前7年に延長されることになりました。
 この改正に対する緩和措置として、延長された4年間に受けた贈与については、相続税の計算において、当該贈与財産の価額の合計額から総額100万円が控除されます。

 この改正は令和6年1月より施行されます。4年間の延長(1年目)が反映されるのは令和9年1月からとなります。

2.相続時精算課税

 相続時精算課税は暦年課税と違い年110万円の基礎控除はありませんでしたが、新たに年110万円の基礎控除が設けられ、年110万円以下の贈与は贈与税申告が不要になりました。また、相続税の計算においても年110万円以下の贈与は相続財産に加算する必要はありません。
 従前の相続時精算課税は、贈与した財産を相続時に相続財産に加算するため、相続税の課税対象となる場合には基本的に節税効果の見込みが難しいこと、暦年課税での年110万円の基礎控除が無くなるため少額の贈与でも贈与税申告が必要でした。
 今回の改正で精算課税制度でも年110万円の基礎控除が設けられ、かつ基礎控除分は将来の相続財産に加算する必要もなくなりました。
 なお、相続時精算課税は一旦選択するとその贈与者からの贈与については暦年課税に戻ることはできません。

3.教育資金の一括贈与

 現行制度は令和5年3月31日までが適用期限となっていましたが、令和8年3月31日まで3年間延長されることになりました。また、改正前は贈与者の相続時に教育資金として利用していない金額があっても、受贈者が23歳未満であれば受贈者が相続などにより取得したものとみなされませんでした。しかし、改正後は相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは使いきれなかった金額は相続などにより取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。
 また、受贈者が30歳に達した場合などにおいて管理残額に贈与税が課される場合は、特例税率ではなく一般税率が適用されることとなりました。

4.結婚・子育て資金の一括贈与

 現行制度は令和5年3月31日までが適用期限となっていましたが、令和7年3月31日まで2年間延長されることになりました。
 受贈者が50歳に達した場合などにおいて管理残額に贈与税が課される場合は、特例税率ではなく一般税率が適用されることとなりました。

5.まとめ

 贈与税の令和5年度税制改正につきましては、従前の制度と比べると贈与税と相続税の課税の観点から、暦年課税ではなく相続時精算課税の利用を促進する改正であると思われます。教育資金や結婚・子育て資金の贈与についても軽微な改正と期間の延長もされました。適用開始期間や経過措置なども含め詳細は税理士にお尋ね下さい。

税理士 水野雄介

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