はじめに
今年も早12月となり、年末調整の時期となりました。令和5年分の年末調整について、令和4年分からの改正の一つとして、非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用要件の見直しがなされています。近年、技能実習生やエンジニアとして外国から人材を受け入れている法人が増加していることから、この見直しの影響を受ける従業員を雇用している方も多いと思います。本稿では扶養控除を受けるための条件や必要書類について説明します。
1.「非居住者である扶養親族」とは
「非居住者」とは、居住者以外の個人です。居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいいます。また、「扶養親族」とは、所得者と生計を一にする親族で合計所得金額が48万円以下の人をいいます。「非居住者である扶養親族」とは、これらの2つをいずれも満たす人です。例えば外国人従業員が母国に残してきた家族で、収入がなく、その従業員からの送金で生計を立てているような人は「非居住者である扶養親族」にあてはまることになります。日本人従業員でも留学している子などは、「非居住者である扶養親族」にあてはまる可能性があります。
2.非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用要件の見直し
扶養親族であっても、全員が年末調整において扶養控除を受けられる訳ではありません。かつては扶養親族であれば年末調整において扶養控除を受けることができたのですが、平成23年以降、扶養控除を受けられるのは年齢が16歳以上の扶養親族に限られています。ここで16歳以上とは、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上という意味ですので、令和5年の年末調整でいえば平成20年1月1日以前に生まれた人を指します。
非居住者である扶養親族の扶養控除についても、令和4年までは16歳以上であれば(後述する親族関係書類及び送金関係書類の準備は必要ですが)扶養控除が受けられました。しかし令和5年分の年末調整から扶養控除を受ける要件が見直され、控除対象となる扶養親族の範囲から年齢が30歳以上70歳未満の非居住者であって次の①~③のいずれにも該当しないものが除外されました。逆にいえば、年齢が30歳以上70歳未満の非居住者であっても①②③のいずれかに該当すれば控除対象となります。
- 留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
- 障害者
- 扶養控除の適用を受けようとする人からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
外国人従業員の親族でいえば、例えば母国に住む収入のない65歳の両親でも、その従業員からの生活費の送金が年38万円未満であれば、障害者でない限り、扶養控除は受けられなくなります。
3.年末調整の必要書類
非居住者である扶養親族について扶養控除を受ける場合には、親族関係書類と送金関係書類を添付又は提示する必要があります。
親族関係書類とは、その非居住者である親族が年末調整を受ける本人の親族であることを証するものです。外国人労働者の場合、外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類で、親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものが必要です。
送金関係書類とは、年末調整を受ける本人が非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるための支払を各人に行ったことを明らかにするもので、外国送金時の金融機関の書類などです。各人への送金を明らかにしなければなりませんので、送金先は控除対象にする扶養親族それぞれである必要があります。
おわりに
非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用要件と必要書類について説明してきました。監理団体によっては控除を受けるために必要な書類の準備を手助けしてくれる場合もあるようですが、準備に時間がかかる場合もありますので、早めに準備を始めることをお勧めします。不明な点がございましたら、税理士にお尋ねください。
以上
税理士 遠山健志