【税務】第158弾 海外勤務者の源泉所得税について

はじめに

 海外勤務者の給与に係る源泉所得税は、非居住者課税に該当することもあり、課税漏れや誤りが多いです。今回は、その留意点を説明させていただきますので、適正な源泉徴収事務の参考になればと思います。

非居住者と居住者の課税

 海外勤務者が非居住者の場合と居住者の場合とでは、日本本社から支払われる給与について源泉徴収する税額が異なります。
 非居住者の場合は国内源泉所得(具体的には日本国内の勤務に基因する給与額)に対して20.42%の税率で源泉徴収する必要があります。それに対して居住者の場合は普通の社員と同じように月々源泉徴収して、年末調整を行います。

海外勤務者が非居住者か居住者かの判定

 当該海外勤務者が1年以上の予定で海外子会社等へ出向した場合は、出国日の翌日から非居住者となります。1年未満の出向予定であれば居住者となります。

非居住者となった海外勤務者(日本本社で取締役ではなく社員)の課税の留意点

1 永年表彰の賞金等

 海外勤務中に永年表彰の賞金、商品券等を日本本社が支給した場合、日本国内の勤務に基因する給与額が含まれていることがあります。例えば勤続20年の方に永年表彰金20万円を支払い、その方の勤務履歴が日本本社15年、海外子会社5年の場合、日本本社勤務の15年分は日本国内の勤務に基因する給与額となり15万円は課税対象となります。15万円×20.42%=30,630円を源泉徴収する必要があります。

2 出国後賞与

 非居住者となった海外勤務者は勤務が海外であるため、日本本社から支払う留守宅手当等の給与額は課税されません。しかしながら、出国後に支払う賞与には日本国内の勤務に基因する給与額が含まれている場合があります。
 例えば、給与規定で賞与について、「下半期賞与を当年の4月1日から当年の9月30日を計算期間として当年の12月10日に支給する。」と規定があって、当年8月1日に海外勤務ために出国した場合は、12月10日に支払った賞与額のうち当年の4月1日から当年の8月1日(123日)までの分は日本国内の勤務に基因する給与額となります。
 具体的には12月10日に支給した賞与額が500,000円であった場合、源泉徴収すべき税額は次のとおりです。
  (500,000円×123日/183日)×20.42% =68,624円
  ※183日は当年の4月1日から当年の9月30日の日数

3 出国後給与

 給与は賞与とは別の取扱いになります。給与は非居住者になった以後、支給日が到来する給与のうち当該計算期間が1か月以下で、かつ、その全額が国内勤務分でない場合は、源泉徴収しなくてもよいことになっています。具体的には当月分の給与をその月の25日に支払うことになっている場合にその月の24日に出国しても課税はしなくていいです。しかしながら、給与の計算期間が前月21日から当月20日で、支払日が当月の25日の場合において、24日に出国した海外勤務者については25日に支給された給与額はその全額が国内勤務分であることから20.42%の税率で源泉所得税を徴収する必要があります。

日本本社の取締役が海外出向により非居住となった場合の留意点

 日本本社で取締役に就任している人が海外出向して非居住者となった場合、当該取締役は取締役会での意思決定等、日本本社の経営にも従事していることから、日本本社で支払われる役員報酬等は国内勤務に基因する給与額となり、原則20.42%の税率で課税されます。

以上

税理士 川瀬 正勝

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