2024年4月から、労働条件明示のルールが変更となります。労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示事項が追加されます。
労働条件の明示について、労働基準法第15条は、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」としています。また、具体的な労働条件の明示内容は、労働基準法施行規則第5条において定められています。
【 制度改正のポイント 】
◇全ての労働者に対する明示事項
明示のタイミング | 新しく追加される明示事項 |
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全ての労働契約の締結時と 有期労働契約の更新時 | ①就業場所・業務の変更の範囲の明示 全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」(※1)についても明示が必要になります。 |
- 「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。
◇有期契約労働者に対する明示事項等
明示のタイミング | 新しく追加される明示事項 |
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有期労働契約の 締結時と更新時 | ①更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容 有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。 |
無期転換ルール(※2)に 基づく無期転換申込権が 発生する契約の更新時 | ②無期転換申込機会の明示 「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと(※3)に、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要になります。 |
③無期転換後の労働条件の明示 「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと(※3)に、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。 |
- 同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えるときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換する制度です。
- 初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに、今回の改正による無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
時間外労働の上限規制 適用猶予事業も4月から適用へ
令和2年4月より、時間外労働の上限規制が中小企業にも適用されています。
その一方で、以下の事業・業務については、長時間労働の背景に、業務の特性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限について適用が5年間猶予されていましたが、(大企業に適用された平成31年4月から5年)、一部特例つきで、令和6年4月より適用されます。
事業・業務 | 猶予期間中の取扱い (3月31日まで) | 猶予後の取扱い (2024年4月1日以降) |
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工作物の建設の事業 | 上限規制は 適用されません | 災害時における復旧及び復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます。 災害時における復旧及び復興の事業には、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制は適用されません。 |
自動車運転の業務 | 特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。 時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制が適用されません。 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。 | |
医業に従事する医師 | 特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外・休日労働の上限が最大1860時間(※)となります。 時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制が適用されません。 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。 医療法等に追加的健康確保措置に関する定めがあります。 ※:特別条項付き36協定を締結する場合、特別延長時間の上限(36協定上定めることができる時間の上限)については、 A水準、連携B水準では、年960時間(休日労働含む) B水準、C水準では、年1,860時間(休日労働含む)となります。 なお、医業に従事する医師については、特別延長時間の範囲内であっても、個人に対する時間外・休日労働時間の上限として副業・兼業先の労働時間も通算して、時間外・休日労働を、 A水準では、年960時間/月100時間未満(例外的につき100時間 未満の上限が適用されない場合がある) B、連携B水準、C水準では、年1,860時間/月100時間未満(例 外的に月100時間未満の上限が適用されない場合がある)とする必要があります。 |