【税務】第160弾 暗号資産(仮想通貨)と税金

はじめに

 2017年頃に起こった大きな価格上昇で広く知られることとなった暗号資産ですが、何となく聞いたことはあるけれどよく分からないという人もいるのではないでしょうか。
 そこで今回は暗号資産の概要と個人が暗号資産取引を行った場合の税務上の取扱いについて説明します。

1.暗号資産の概要

 暗号資産とはインターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。

  1. 不特定多数の者に対して、代金の支払いなどに使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドルなど)と相互に交換できる
  2. 電子的に記録され、移転できる
  3. 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカードなど)ではない

 分かりやすく言うと暗号資産とは、財産的価値を有し、銀行などの第三者を介さずにインターネット上で取引できる「データ資産」のことです。代表的な暗号資産として「ビットコイン」や「イーサリアム」があります。暗号資産は、「交換所」や「取引所」と呼ばれる事業者(暗号資産交換業者)から入手・換金することができます。
 暗号資産は、国家やその中央銀行によって発行された法定通貨ではないこと、また、価値を裏付けする資産をもっていないことなどから価格変動が大きい傾向にあります。
 また、暗号資産に関する詐欺などの事例も数多く報告されていますので、注意が必要です。

2.暗号資産に関する税務上の取扱いについて

 暗号資産を売却又は使用することにより生ずる利益については、邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益と認められるので、原則として、雑所得に区分され所得税の確定申告が必要になります。
 ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合には、次の所得に区分されます。

  • 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合・・・原則として事業所得
  • 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合・・・原則として雑所得(業務に係る雑所得)

 申告が必要になる可能性がある主なケースは以下のとおりでその所得金額が税金の対象になります。暗号資産の評価額については「総平均法」又は「移動平均法」のいずれかの評価方法により算出することとされています。評価方法の届出がない場合には「総平均法」となります。

①暗号資産を売却した場合

 保有する暗号資産を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価などとの差額となります。

②暗号資産で商品を購入した場合

 保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになりますので、この譲渡にかかる所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価などとの差額となります。

③暗号資産同士の交換を行った場合

 保有する暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aを売却して暗号資産Bを購入したことになりますので、この譲渡にかかる所得金額は、暗号資産Aの譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価などとの差額となります。

おわりに

 暗号資産の概要と税務上の取扱いについて簡単に説明させていただきました。
 暗号資産で課税の対象となる取引は上記3パターンのほかにもあります。
 「マイニング」「ステーキング」「レンディング」などにより暗号資産を取得した場合が該当し、その取得にともない生じる利益が課税の対象となります。
 このように暗号資産取引によって利益が生じた場合、確定申告が必要となるケースがあります。暗号資産取引で生じた利益には源泉徴収の制度はなく、自分で確定申告を行う必要があるのかどうかを判断しなければなりません。
 不明な点がございましたら税理士などの専門家に相談することをおすすめいたします。

税理士 伊藤秀和

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