【税務】第163弾 給与所得者における定額減税の注意点とポイント

給与所得者の定額減税について

 2024年6月から定額減税が実施され、例年とは事務処理が異なる点があるため注意が必要です。今回は給与所得者における定額減税の注意点やポイントを説明します。
 実施される時期は所得税に関しては、2024年6月1日以後最初に支払われる給与などからです。
 住民税に関しては、定額減税の対象者に対して2024年6月分の特別徴収は行わず、定額減税後の年税額を2024年7月分から2025年5月分までの11ヶ月に分割して徴収します。

1.定額減税の対象者と金額

【所得税の対象者】
2024年分の所得税の納税義務者のうち、2024年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)の人

【所得税の減税額】
本人30,000円+同一生計配偶者または扶養親族の人数×30,000円

【住民税の対象者】
2024年度の住民税の納税義務者のうち、前年2023年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)の人
 均等割のみ課税される納税義務者は定額減税の対象外です。

【住民税の減税額】
本人10,000円+同一生計配偶者または扶養親族の人数×10,000円
※上記はいずれも居住者に限ります。

2.定額減税の対象者についての注意点

  1. 控除対象者は、2024年6月1日時点で給与などの源泉徴収で源泉徴収税額表の甲欄が適用される人です。源泉徴収税額表の乙欄・丙欄が適用される人や、6月2日以後に勤務することになった人は対象ではありません。
     また控除対象者の確認時には合計所得金額(見積額)を勘案しないため、合計所得金額が1,805万円を超える見込みの人であっても月次減税事務を行う必要があります。
  2. 定額減税では所得税法上の控除対象扶養親族だけでなく16歳未満の扶養親族も含まれます。
  3. 非居住者である同一生計配偶者及び非居住者である扶養親族は、減税額を計算する際の人数には含まれません。海外在住の親族を扶養親族にしている場合は注意が必要です。

3.定額減税に関して知っておきたいポイント

①月次減税事務対象者・住民税の定額減税対象者を事前に把握すること

 適用される人・されない人が発生するため、事務手続きを始める前に減税を行う対象者を洗い出しておくことが必要です。

②源泉徴収にかかる「定額減税のための申告書」が提出されたら対象人数に加えてよいか確認すること

 「その時点で現に把握している情報に基づき計算する」方法でよいとされているため、改めて扶養控除等申告書を提出してもらう必要はなく、年調減税事務においては年末調整で提出された扶養控除申告書に基づいて計算することで足ります。

③給与明細・源泉徴収票には定額減税額の記載をすること

 定額減税額を控除した給与などの支払明細には、定額減税を実施した証明として、月次減税額のうちその月に控除した額を記載しなければなりません。また、年末調整後に発行する源泉徴収票にも、控除額を摘要欄に記載しなければなりません。

④控除しきれない場合は源泉徴収税額から順次控除する

 所得税の金額によっては、減税額分を控除しきれないケースがあります。2024年6月1日以後最初に支払う給与などに対する源泉徴収税額が減税額を上回る場合は、差額を源泉徴収して月次減税事務は終了です。しかし、源泉徴収税額よりも減税額が上回る場合は、減税額の一部を控除しきれません。控除しきれない金額がなくなるまで、以後支払う2024年分の給与や賞与にかかる税額から順次控除します。また、各月における繰越額を従業員ごとに管理する必要があります。

⑤納付すべき税額がなくなった場合も納付書を提出すること

 各月の月次減税事務が終わったら、給与所得・退職所得などの所得税徴収高計算書に所要事項を記載して法定期限内に源泉徴収税額を納付することになります。このとき、月次減税額の控除などにより、納付すべき税額がなくなった場合でも、納付書の各欄を記入し納付書を所轄税務署に提出しなければなりません。

 例年と事務処理が異なる点がありますので、スムーズに対応できるように情報を随時確認して理解しておくことが大切です。

税理士 川村美香                        

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