【税務】第164弾 不正な免税110番 〜STOP! 免税店制度の不正利用〜 国税庁HPに通報窓口が開設されました

1 はじめに

 免税店制度は、免税店(消費税法第8条の「輸出物品販売場」のこと、以下「免税店」といいます。)の許可を受けた事業者が、外国人観光客などに対して、免税対象物品を一定の方法で販売する場合には、消費税が免除される制度です。
 免税店の許可を受けるためには、免税店の種類に応じて「輸出物品販売場許可申請書」を事業者の納税地を所轄する税務署に提出するなどの手続きが必要です。

2 免税店制度の概要

 日本での免税制度は、免税店が主体となる制度で、1952年(昭和27年)物品税の時代に創設された、世界でも最も古い免税(TAX FREE)制度です。諸外国では、旅行者が主体の制度で1980年代に欧州で開始されたとのことです。
 最近では、令和4年度税制改正に基づき、令和5年4月1日から一部制度が改正されています。

⑴ 免税店の種類

  1. 一般型輸出物品販売場
    事業者が、その販売場においてのみ免税販売手続を行う免税店をいいます。
  2. 手続委託型輸出物品販売場
    免税店が所在する特定商業施設(商店街やショッピングセンターなど)内に免税手続カウンターを設置する承認免税手続事業者が、免税販売手続を代理して行う免税店をいいます。
  3. 自動販売機型輸出物品販売場
    一定の基準を満たす自動販売機によってのみ免税販売手続が行われる免税店をいいます。

⑵ 免税購入対象者

 外国為替及び外国貿易法に規定する非居住者であって、一定の要件を満たす者、例えば、外国人観光客や一時帰国中の日本人などの非居住者が対象となります。免税店は、旅券や在留証明などにより、免税購入対象者であることを確認して販売などをしなければなりません。そして、2020年(令和2年)4月から、免税店は免税販売手続の電子化に対応することが義務化されました。この免税販売手続の電子化とは、購入記録情報を、免税販売手続の際、インターネット回線などにより、遅滞なく国税庁長官に電子的に送信することをいいます。

⑶ 免税対象物品

 免税対象物品は、輸出するために購入される物品のうち、通常生活の用に供する物品です。金又は白金の地金や事業用又は販売用として購入されることが明らかな物品は、免税販売の対象となりません。その物品が「通常生活の用に供する物品」に該当するかどうかについては、事業者が総合勘案して判定することとなります。例えば、一般物品(家電製品や洋服、カバン、時計など)の場合、同一日に購入した物品の合計金額が5,000円(税抜)以上で免税になります。消耗品(食品や化粧品、医薬品など)は、①同じ店舗での1日の購入合計額が5,000円以上50万円以下(税抜)の範囲であることと、②日本国内で消費されないように指定された方法で包装されていることの二つが条件となります。

3 免税品の転売問題

 化粧品などの免税販売を巡り、大手百貨店が国税局の調査を受けて、消費税約2億円の追徴課税を受けたとの報道がありました。免税購入対象ではない外国人らが、免税対象物品である化粧品を大量購入して、消費税分を稼ぐために転売していた可能性が高いというものです。
 この場合に、当該百貨店が外国人から追加で消費税をもらうことは事実上不可能ですので、約2億円の追徴課税は全て百貨店の負担となります。
 国税当局は、この問題に対して厳格な対応を取っています。
 そのような経緯もあり、国税庁では「不正な免税110番」としてホームページ上に通報窓口を開設しました。
 通報内容は具体的な手段・方法に関する情報、人物・グループに関する情報、悪用パスポートに関する情報など、その内容は問わないとされていて、情報提供者の個人情報やその内容は、外部に漏らすことはないとされています。
 免税店制度は、観光業や経済に大きな影響を与えている重要なトピックです。今後も注目されていくと思われます。

 (参考)
 「DUTY FREE」と「TAX FREE」の違いはご存知ですか。
 「DUTY FREE」は、関税などの免税で、市中の免税店で購入した場合には、商品は出国場所にて手渡されます。「TAX FREE」は非居住者に対して国内の消費税が免除となるもので、海外へ持ち出すことを前提として免税とされています。

税理士 松谷泰子

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