所得税の住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除)は、数次の改正が行われ、内容が非常に複雑化しております。今回は、令和4年度の税制改正における改正点に焦点を絞り、簡潔に解説を行いたいと思います。
1 概要
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用して、住宅の新築、取得または増改築等をし、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基準にして計算した金額を、各年分の所得税額から控除するものです。また、所得税において控除すべき金額が、各年分の所得税額を超えた場合は、所得税額から控除しきれなかった金額のうち一定金額までは翌年度の住民税から控除することができます。
重要な改正として区分の変更が挙げられます。今回の改正において、改正前新築住宅は、認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)と一般住宅に区分されていましたが、認定住宅、ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に区分が変更されました。また一般住宅は、住宅の取得等が居住用家屋の新築、居住用家屋で建築後使用されたことがないもの及び宅地建物取引業者により、一定の増改築等が行われた一定の居住用住宅に区分が変更になっております。
2 住宅区分ごとの適用要件
下記図表1〜3において、新築住宅、中古住宅及び認定住宅を購入した場合の住宅ローン控除の要件をまとめております。これらの要件を満たせば、住宅ローン控除を受けられる場合がありますので、確認しておきましょう。
所得要件 | 合計所得金額2,000万円以下 | |
最低床面積 | 50㎡以上 (40㎡以上 注1) | |
控除率 | 0.7% | |
居住年 | 2022・2023 | 2024・2025 |
控除対象 借入限度額 | 3,000万円 | 0円(2,000万円) 注2 |
控除期間 | 13年 | 10年 |
最大控除額 | 273万円 | 140万円 |
注1.40㎡以上で住宅ローン控除の適用を受けられるのは、その年の合計所得金額が1,000万円以下である場合です。
注2.2,000万円の借入限度額での控除が認められるのは、2023年12月31日以前に新築の建築確認を受け、2024年、2025年に実際に居住した場合に限られます。また2024年1月1日以後に建築確認を受ける住宅の用に供する家屋は一定の省エネ基準を満たさなければ、適用できないことに留意する必要があります。
控除期間 | 10年 |
控除率 | 0.7% |
控除対象借入限度額および最大控除額 | |
居住年 | 2022・2023・2024・2025 |
認定住宅等 | 3,000万円(210万円) |
認定住宅等以外 | 2,000万円(140万円) |
注 図表カッコ内は、個人の最大控除額になります。
今回の改正の大きなポイントに住宅性能によって細分化された点が挙げられます。今回細分化された内容を以下図表3にまとめております。
控除期間 | 13年 | |
控除率 | 0.7% | |
控除対象借入限度額および最大控除額 | ||
居住年 | 2022・2023 | 2024・2025 |
認定住宅 | 5,000万円 (455万円) | 4,500万円 (409,5万円) |
ZEH水準 省エネ住宅 | 4,500万円 (409,5万円) | 3,500万円 (318,5万円) |
省エネ基準 適合住宅 | 4,000万円 (364万円) | 3,000万円 (273万円) |
注 図表カッコ内は、個人の最大控除額になります。
3 提出書類等
住宅ローン控除の適用を受けるための確定申告をする場合は、下記書類を納税者の所轄税務署に提出する必要があります。
・確定申告書(税務署で入手)
・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(税務署で入手)
・住民票の写し
・土地の登記事項証明書(土地等購入に係る借入金がある場合)
・家屋の登記事項証明書(中古住宅の購入、増改築については、計算明細書の家屋番号の
記載でも可)
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書
・売買契約書、建築請負契約書の写し
・給与所得の源泉徴収票
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅で控除を受ける場合は下記書類も併せて提出する必要があります。
・認定長期優良住宅建築証明書(不動産会社で入手)
・認定低炭素住宅建築証明書(不動産会社で入手) など
また、税務署で入手する書類は、国税庁ホームページからダウンロードをすることも可能です。
4 まとめ
今回は住宅ローン控除について令和4年度税制改正に焦点を絞り、簡潔に説明をさせていただきました。今回の改正で適用期間が2025年まで延長されたことにより、近時、さらなる改正がされることは考えにくい状況になっております。しかしながら、この制度は、長年継続してきた経緯があり、住宅ローン控除の適用の有無は資産の購入時期によって適用要件が異なっております。疑問点は、税理士に相談されることをお勧めします。
税理士 飯田哲也