1.はじめに
総務省の調査結果によると、令和3年度におけるふるさと納税の受入額は約8,302億円で過去最高となりました(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施)」令和4年7月29日公表)。ふるさと納税についてはどこかで見聞きしたことがあっても、仕組みがわからなくて実際に利用したことはないという方もまだいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、ふるさと納税について解説します。
2.ふるさと納税の概要
ふるさと納税とは、個人が自身の選んだ自治体に寄附を行った場合、所得税及び個人住民税において一定金額の控除を受けることができる制度です。
ふるさと納税は生まれ故郷に限らず、日本全国の自治体へ行うことができます。自治体により、ふるさと納税を行った者がその使途を指定することができたり、返礼としてその地方の特産品などを受け取ったりすることができます。
このような仕組みを指してふるさと”納税”という言葉が使われていますが、制度上は自治体への寄附と税金の控除とを組み合わせたものです。そのため、正しく利用するにあたっては「控除額の計算方法」と「控除を受けるための手続き」を理解する必要があります。
3.控除額の計算方法
所得税及び個人住民税から控除される金額は、それぞれ以下の算式により計算した金額です。
⑴所得税
次の金額が所得控除の対象になります。
所得控除額=ふるさと納税の寄附額-2,000円
※ただし、控除の対象となるふるさと納税の寄附額は、総所得金額などの40%が上限です。
⑵個人住民税(基本分)
次の金額が税額控除の対象になります。
税額控除額=(ふるさと納税の寄附額-2,000円)×10%
⑶個人住民税(特例分)
上記⑴及び⑵により控除できなかった額(次の算式により求めた額)が税額控除の対象になります。
税額控除額=(ふるさと納税の寄附額-2,000円)×(100%-10%-所得税率(注))
※ただし、税額控除額は個人住民税所得割額の20%が上限です。
(注)令和19年分までは、復興特別所得税を加算します。
ふるさと納税の寄附額のうち上限を超える分は、控除の対象とならないことに注意が必要です。控除の上限額が適用されるふるさと納税の寄附額は、収入や家族構成などに応じて異なります。
4.控除を受けるための手続き
⑴確定申告をする場合
ふるさと納税について控除を受けるためには、原則として確定申告をする必要があります。確定申告をする際は、自治体が発行する寄附の証明書・受領書などが必要です。
⑵ワンストップ特例制度を利用する場合
確定申告が不要である給与所得者などは、ふるさと納税先が5団体以内である場合に限り、控除を受けるための確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」を利用することができます。同特例を利用するためには、ふるさと納税を行う際、ふるさと納税先の自治体へ申請書を提出する必要があります。
なお、同特例については、以下の点にご注意ください。
- 6以上の自治体にふるさと納税を行った場合、すべての自治体について同特例を利用することはできません。
- ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告を行う場合(年末調整を受けない所得がある場合や医療費控除を受ける場合など)は、ふるさと納税の寄附額を寄附金控除の計算に含めて確定申告する必要があります。
- 同特例を利用した場合、ふるさと納税について所得税の控除を受けることはできません。
5.返礼品などを受け取った場合の課税関係
ふるさと納税の寄附者が自治体から返礼品などを受け取った場合、その経済的利益は一時所得に該当します。その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額の合計額を差し引いた金額が50万円を超える場合は、所得税及び個人住民税の課税対象となるため注意が必要です。
6.おわりに
以上のように、ふるさと納税を行うにあたっては、控除される寄附額の上限がいくらなのか、確定申告または特例のうちどちらの手続きによるべきなのかを把握する必要があります。ふるさと納税の具体的な控除額や確定申告などについては、税理士にお尋ねください。
以上
千種支部 北村徳志