【税務】第147弾 確定申告における医療費控除

 病院への通院・入院・医療器具の購入等、治療にかかる費用は高額になりがちです。その金銭的な負担が軽減される制度として、「医療費控除」があります。
 今回は確定申告における医療費控除をテーマとして、「医療費控除の対象となる医療費」や「控除額の計算方法」について説明します。

 一定の金額の医療費を支払ったときは、確定申告を行うことで、所得税(復興特別所得税を含む)が還付及び住民税が軽減される場合があります。
 その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額に基づいて計算される金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。

1.医療費控除の対象となる医療費

 1.医師、歯科医師による診療や治療の対価、2.治療のためのあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などによる施術の対価、3.助産師による分べんの介助の対価、4.医師等による一定の特定保健指導の対価(積極的支援に係るものに限る)、5.介護福祉士等による喀痰吸引等の対価、6.保健師や看護師、准看護師による療養上の世話の対価、7.治療や療養に必要な医薬品の購入の対価、8.病院、診療所又は助産所などへ収容されるための人的役務の提供の対価など、が該当します。

2.医療費控除の対象となる金額

 次の算式で計算した金額(最高200万円)となります。

 算式
  控除額=その年中に実際に支払った医療費の合計額-(A)の金額-(B)の金額

(A)保険金などで補てんされる金額
 (例)生命保険契約などで支給される入院給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産一時手当金など)
 なお、保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引くので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。

(B)10万円又は所得金額の5%(いずれか少ない額)

3.医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)

 平成29年1月1日から令和8年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の特定一般用医薬品等購入費を支払った場合で、自己がその年中に健康の保持促進及び疾病の予防への取組として、一定の健康診査や予防接種などを行っているときは、次の算式によって計算した金額が医療費控除の特例の対象となる金額として所得金額から差し引かれます。

算式
 控除額=その年中に支払った特定一般用医薬品等購入費-保険金などで補てんされる金額-12,000円

 なお、この特例については通常の医療費控除との選択適用となります。

4.医療費控除を受けるための手続

 医療費控除を受けるためには、医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を提出する必要があり、その際、医療費控除の明細書又は医療保険者等が発行した医療費通知を確定申告書に添付する必要があります。
 各医療保険者等から医療費通知の電子データの交付を受けた方は、当該データを確定申告書に添付し、電子的に提出・送信することができ、また、医療費通知情報(令和3年9月分以降診療分)を、マイナポータル連携により一括取得し、申告書に自動入力することができます(詳細は国税庁HPの「マイナポータル連携特設ページ<https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/mynapo.htm>」を参照。
 医療費控除の明細書を添付する場合には、確定申告期限から5年間、税務署長から医療費の領収書の提示を求められたときに、この領収書を提示又は提出する必要があります。

 確定申告書を作成する際には、上記資料等の他、マイナンバーカード、源泉徴収票、申告する年の全ての所得や諸控除等の資料が必要となります。確定申告の対象となる医療費や手続についての詳細は、税理士にお尋ね下さい。

税理士 蜂須賀 徹

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