【税務】第168弾 中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制

中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制について

 中小企業の経営力の強化や生産性向上を図るための税制上の措置として、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制があります。今回はそれぞれの税制の概要と相違点について説明します。

1.中小企業投資促進税制

①制度の概要

 中小企業投資促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者などが、平成10年6月1日から令和7年3月31日までの期間に、新たに機械装置などの設備を取得または製作し、事業の用に供した場合、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人・個人事業主のみ)を選択適用することができる制度です。

②対象者

  • 中小企業者など(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合など)
  • 従業員数1,000人以下の個人事業主

③対象となる設備

設 備取得価額要件
機械装置1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
測定工具・検査工具1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの
(1台又は1基の取得価額が30万円以上かつ事業年度の取得価額の合計額が120万円以上のものを含む)
一定のソフトウェア一のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの(事業年度の 取得価額の合計額が70万円以上のものを含む)
普通貨物自動車車両総重量3.5トン以上
内航船舶取得価額の75%が対象

※中古、貸付の用に供する設備は対象外です

2.中小企業経営強化税制

①制度の概要

 中小企業経営強化税制は、青色申告書を提出する中小企業者などが、平成29年4月1日から令和7年3月31日までの期間に、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、新たに一定の設備を取得または製作もしくは建設して、事業の用に供した場合、即時償却又は取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人の場合は7%)の税額控除を選択適用することができる制度です。

②対象者

  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
  • 資本また出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
  • 協同組合など

③対象となる設備

 中小企業経営強化税制の適用対象となる設備は、中小企業等経営強化法に規定されており、導入目的によって以下の4つの類型に分類されます。

類 型要 件確認者対象設備その他要件
生産性向上設備
(A類型)
生産性が旧モデル比平均1%以上向上する設備工業会等機械装置(160万円以上)
工具 (30万円以上)
(A類型の場合、測定工具又は検査工具に限る)
器具備品(30万円以上)
建物附属設備(60万円以上)
ソフトウェア(70万円以上)
(A類型の場合、設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限る)
生産等設備を構成するもの
*事務用器具備品・本店・寄宿舎等に係る建物附属設備、福利厚生施設に係るものは該当しません。
国内への投資であること
中古資産・貸付資産でないこと
収益力強化設備
(B類型)
投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備経済産業局
デジタル化設備
(C類型)
可視化遠隔操作自動制御化のいずれかに該当する設備
経営資源集約化設備
(D類型)
修正ROA又は有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画に係る設備

3.両制度の相違点

 中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制は、ともに青色申告書を提出する中小企業者などを対象としています。
 対象となる設備につきましては、新品が対象で中古資産、貸付資産が対象外という点は両制度共通となっていますが、中小企業投資促進税制では建物附属設備、器具及び備品が対象外となっており、工具は測定工具と検査工具に限定されています。一方、中小企業経営強化税制では車両運搬具、船舶が対象外となっており、さらに導入目的によって分類された類型ごとに対象となる設備が異なります。
 減価償却率と税額控除率につきましては、中小企業投資促進税制が30%の特別償却または7%の税額控除であるのに対し、中小企業経営強化税制では即時償却が可能であり、税額控除も10%となっています。そのため、中小企業経営強化税制は中小企業投資促進税制に比べより大きな節税効果があります。

中小企業投資促進税制特別償却税額控除
個人事業主
資本金3,000万円以下の法人
30%7%
資本金3,000万円超の法人30%なし
中小企業経営強化税制即時償却税額控除
個人事業主
資本金3,000万円以下の法人
100%10%
資本金3,000万円超1億円以下の法人100%7%

 手続きにつきましては、中小企業投資促進税制は確定申告書などに関連する明細書を添付して申告することで、特別償却または税額控除の適用を受けることができます。一方、中小企業経営強化税制で即時償却または税額控除の適用を受けるためには、先ず経営力向上計画の認定を受ける必要があります。さらに申告の際には、確定申告書などと関連する明細書に加え、「経営力向上計画に係る認定申請書の写し」と「経営力向上計画に係る認定書の写し」を添付しなければなりません。そのため、中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、中小企業投資促進税制に比べより多くの手間と時間が掛かります。

4.最後に

 今回は中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の概要と相違点について説明しました。今後設備投資をお考えの場合は、事業の状況や目的に応じてこれらの税制を活用してはどうでしょうか。具体的な手続きについての詳細は認定経営革新等支援機関(商工会議所、商工会など)や税理士にお尋ねください。

税理士 小笠原 至

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