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HOME労務・税務・金融税務に関する情報 > 知っておきたい最新の税務情報 第78弾

知っておきたい最新の税務情報 第78弾 [2017.06.02]

改正された事業承継税制

 経営者の皆様は、事業承継税制という言葉を目にされたことがあると思います。平成21年度税制改正で創設されたこの制度、「知っておきたい最新の税務情報」でも第23弾[2012.11.11]第46弾[2014.10.10]で取り上げています。

 中小企業の経営者の高齢化が進む一方、事業承継は進まず、60歳以上の法人経営者の3割が廃業を予定している、という調査結果が出ています。廃業を予定している理由として後継者がいないことを挙げる経営者が3割近くに上っています。一方、後継者がいる場合でも、円滑な事業承継を阻む大きな要因があります。それは、後継者が自社株式を承継する場合の相続税・贈与税の負担です。


事業承継税制=非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度

 自社株式は、換金できない資産であるにもかかわらず、株価を算出すると高額となる場合があります。その自社株式を後継者が相続したり贈与を受けると、相続税・贈与税の負担もまた高額になります。しかし、経営を安定的に継続していくためには後継者に株式を集中させる必要があります。
 そこで、発行済議決権株式総数の3分の2(後継者がもともと保有していた議決権株式数を除く)を限度として、相続の場合は80%、贈与の場合は100%、納税猶予されるのが事業承継税制です。
 ところが、この制度は、中小企業の事業継続による雇用確保を主眼に置いているため、猶予後5年間平均で制度適用時の従業員数を8割維持しなければならないという、中小企業にとって厳しい「雇用確保要件」を満たす必要があります。他にも複雑な要件や煩雑な手続があり、要件を満たさなかったり、届出書を期限までに提出しない場合は、納税猶予が打ち切りになり、納税猶予額全額+利子税を納めなければならないため、リスクが高く、経営者は制度の適用に二の足を踏んできました。


平成29年度改正

 平成25年度改正に続き適用要件が緩和され、さらにリスクの低減が図られました。

1.雇用確保要件の緩和

 制度適用時の従業員数を8割維持したかどうか人数を計算する際に、これまでは小数点以下の端数を切り上げていたものを、切り捨てることに変更されました。
 例えば、従業員数4人の場合は、4人×0.8=3.2人。これまでは切り上げて4人となり、5年間で一人でも従業員が減ると納税猶予が打ち切りになりましたが、今後は切り捨てて3人となるため、一人従業員が減っても打ち切りにはなりません。小規模の企業にとっては大きな改正です。

2.贈与税の納税猶予と相続時精算課税制度の併用

 経営者から後継者が自社株式の贈与を受けて、贈与税の納税猶予の適用を受けている場合において、その後要件を満たさず納税猶予が打ち切られ、高額の贈与税を納付することとなるときに、相続時精算課税制度が適用できるようになりました。この場合、自社株式の評価額から2,500万円の特別控除額を控除した後の金額に、20%の税率を掛けた贈与税をいったん納付することになります。将来贈与者が死亡した際には、この自社株式に対し相続税が課税されますが、納付した贈与税は相続税から控除されます。

3.災害時の雇用確保要件の免除・緩和、納税猶予額の免除

 災害等により受けた被害の態様に応じて、雇用確保要件が免除・緩和され、被害を受けた会社が破産等した場合には、納税猶予額が免除されることになりました。

4.会社を大きくした後継者に対する要件緩和

 贈与税の納税猶予を適用した非上場株式の贈与者が死亡し、引き続き相続税の納税猶予の適用を受ける場合に、対象となる会社が、経営努力によって相続時には上場会社になっていても、適用が受けられるようになりました。

 今回の改正の中で、特に上記2の贈与税の納税猶予と相続時精算課税制度の併用が出来るようになったことは、事業承継税制に付いて回る、納税猶予の打ち切りのリスクを大きく低減できるものであり、制度の利用促進に役立つものと期待されます。


税理士 土屋雅彦