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HOME労務・税務・金融税務に関する情報 > 知っておきたい最新の税務情報 第87弾

知っておきたい最新の税務情報 第87弾 [2018.03.09]

一般社団法人等を用いた相続税の課税逃れの防止

 平成29年12月14日、自民、公明両党は与党税制改正大綱を発表しました。この中で、適正な納税のための環境整備として「一般社団法人・一般財団法人に財産を移転することによる課税逃れ(中略)を防止する観点から、贈与税・相続税の課税の適正化を図る。」とされ、一般社団法人・一般財団法人(以下「一般社団法人等」といいます)を用いた相続税・贈与税の課税逃れを防止する規定が創設されることになりました。
 国税庁法人番号公表サイトで検索をすると、平成30年1月時点で「一般社団法人」は約4万6千件、「一般財団法人」は約7千件の結果が表示されます。理事のうち親族割合が1/3以下であること等が要件とされる“非営利型”の一般社団法人等も数多く存在しますが、親族割合の要件のない“その他”の一般社団法人等は約2万4千法人存在するとされています(国税庁法人番号公表サイト等を基に平成29年8月時点主税局推計)。
 この防止規定の対象は、同族関係者が理事の過半数を占めている一般社団法人等です。その一般社団法人等の理事が死亡した場合に、同法人の財産を課税対象として、同法人に相続税を課税するというものです。同族関係者には、配偶者や3親等内の親族及びその理事が役員となっている会社の従業員が含まれます。
 一般社団法人等には、株式会社の株式に相当するような「持ち分」という概念がありません。株式会社の株主が死亡した場合には所有する株式が相続税の課税対象となりますが、一般社団法人等には持ち分がないため、理事などとしてその一般社団法人等を実質的に支配していても相続税は課税されません。近年、この特性を利用して相続税・贈与税の課税を逃れるケースが散見され、問題視されていました。
 課税逃れの具体的な方法は、まず、親が一般社団法人等を設立し、理事などに就任して一族で実質支配する一般社団法人等を作り、親の所有する不動産や株式などの財産を移転します。その後、子や孫にその一般社団法人等の理事などの地位を引き継げば、相続税が課税されないまま一般社団法人等の実質支配を親から承継する、つまり法人の所有する財産の支配を継続することができることになります。
 平成20年12月施行の公益法人制度改革により、公益性の有無に関わらず登記のみによって簡便に設立できる一般社団法人等の制度が創設され、一般社団法人等が数多く設立されました。一般社団法人等が行うことができる事業に制限はなく、行政庁の監督もありません。そのため、本来の一般社団法人等の制度趣旨とは離れて、このような相続税の課税逃れに悪用されるケースが出てきました。租税制度に関する基本的事項を調査審議する政府税制調査会(平成29年11月1日)でも、日本税理士会連合会の神津信一会長が、この課税逃れのスキームについて「課税の公平上、問題となる事象」と指摘しています。
 今回の取り扱いは、一般社団法人等の理事が死亡した場合に相続税を課するものであり、死亡の5年前の時点で既に子や孫に理事が引き継がれていた場合は対象にならないと考えられます(本記事執筆時点での公表資料による)。突発的な事故等がない限り、計画的に理事の引継ぎを行うことで対象から外れるため、今回の改正によってこの課税逃れをすべて防止することは難しいと考えます。
 また、実務的な利用方法として、従業員や外部株主が保有する少数株式を買い取ったり、従業員持株会の継続が難しい場合の受け皿として一般社団法人等を利用しているケースがあります。このケースでは、その会社の総務部門等の部長や課長が一般社団法人等の理事になることが多いようです。ここで、会社の役員が一般社団法人等の理事になっている場合には、相続税の課税の対象となってしまう可能性もあるため注意が必要です。
 課税の公平を害するような行き過ぎた節税、課税逃れは防止しなければならないと考えます。今回の改正では問題をすべて解決できず、また意図せず相続税が課税される可能性も考えられることから、更なる改正が望まれると共に、行き過ぎた節税、課税逃れが少しでも減少して課税の公平性が保たれることを期待します。

税理士 妹尾 明宏