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HOME労務・税務・金融税務に関する情報 > 知っておきたい最新の税務情報 第103弾

知っておきたい最新の税務情報 第103弾 [2019.07.31]

民法改正に伴う税制改正と相続税申告における留意点

 平成30年の国会において、民法の相続規定について大きな改正が行われ、改正法(以下「改正相続法」)が原則として令和元年7月1日から施行されます(本文中施行日の記述がないものについては原則どおり)。税務についてもこれに対応した相続税法の改正が行われたほか、相続税の計算、申告に従来とは違う対応が必要となる項目があります。これらを概観したいと思います。


Ⅰ.配偶者居住権

 例えば、相続財産が5000万円として、配偶者が相続することとなった居住用不動産の評価額が2500万円である場合を考えてみます。配偶者の法定相続分は2分の1で相続可能な財産の金額が2500万円のため、預金等の金融資産について相続できず生活資金に困窮してしまうというケースが考えられます。
 また、例えば同様に相続財産が5000万円として、相続した居住用不動産の評価額が3000万円だとすれば、配偶者は法定相続分よりも500万円超過した財産を取得することとなり、他の相続人から代償金を請求されてしまう場合もあります。さらには、居住用財産を他の相続人が取得することとなり、配偶者が住み慣れた居宅を出ていかなければならない場合もありえます。
 もちろん、遺産分割協議によって、相続財産について配偶者が取得する割合を高くすることは可能です。しかし相続人間の関係が円満な場合なら問題はありませんが、相続人間にトラブルがある場合には同様とは限りません。
 このため平成30年の改正相続法では、配偶者居住権(長期配偶者居住権)制度を創設して、配偶者以外の相続人が配偶者の居住していた建物を取得した場合に配偶者に終身又は一定期間の居住権を取得できることとしました。この配偶者居住権は、存続期間の定めのない限り終身の権利として登記され、一身専属的な法定債権であるため譲渡できません。
 配偶者居住権(長期配偶者居住権)は、平成31年度税制改正において、相続税の課税対象となり相続財産として評価をしなければならないとされました。一方で配偶者居住権が設定された建物および敷地の相続税評価額は、配偶者居住権の評価額を控除して算出されます。
 今回の改正相続法において創設された配偶者居住権は、このような配偶者居住権(長期配偶者居住権)のほかに短期配偶者居住権が創設されました。短期配偶者居住権とは、他の被相続人の所有していた建物に無償で居住していた配偶者に対して、最長で6か月間無償で居住する権利を認めることとしたものですが、これについては相続税の評価は必要ありません。


Ⅱ.特別寄与料への相続税の課税

 令和元年7月1日から相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。これに応じて、平成31年度税制改正において、特別寄与者が支払いを受けるべき特別寄与料の額が確定した場合には、その特別寄与者がその特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税が課されることとされました。特別寄与料が確定した場合、遺贈により取得したとみなされた者はその事由が生じたことを知った日から10か月以内に相続税の申告書を提出しなければならないこととされています。
 また、相続人が支払うべき特別寄与料の額はその相続人に係る相続税の課税価格から控除されます。相続税の申告期限を経過した後に確定した場合には、更正の請求の特則等によって手当されることになり、特別寄与料の額の確定後4か月以内に限り更正の請求をすることができます。


Ⅲ.成年年齢引下げによる税制の年齢要件の見直し

 民法改正により令和4年4月1日以降、成年年齢が20歳から18歳に引下げられることとなったことにともない、同日以降に相続若しくは遺贈または贈与により取得する財産にかかる相続税、贈与税について下記の制度における年齢要件が18歳に引下げられます。

①相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢
②相続時精算課税制度の受贈者の年齢
③直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例の受贈者の年齢
④相続時精算課税制度適用者の特例(住宅取得等資金の贈与)の受贈者の年齢
⑤非上場株式に係る贈与税の納税猶予制度(特例制度についても同じ)の受贈者の年齢

Ⅳ.民法改正により相続税申告上留意が必要な項目

 平成30年の民法改正により税に関する法令改正をともなわないものの、相続税の申告において留意が必要な主なものを列挙します。

1.配偶者間の居住用の不動産贈与の持戻し免除の推定

 婚姻期間が20年以上の夫婦間の居住用不動産の贈与または遺贈について、持戻し免除の意思表示があったものと推定するものとされました。相続税法での婚姻期間20年以上経過後の配偶者への居住用の不動産贈与についての配偶者控除の趣旨が民法上反映したものとされています。

2.相続された預貯金債権についての遺産分割前の払戻し制度の創設

 相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払い、相続債務弁済などの資金需要に対して遺産分割前に払戻しが受けられる制度が創設されました。

3.自筆証書遺言の見直し及び保管制度の創設

 自筆証書遺言について、改正前は、すべて自分で手書きする必要がありましたが、改正相続法では、本文自体は手書きを要するが財産目録等は印字した紙面ごとに署名押印をすれば有効な遺言として取扱われることとなりました。さらに自筆証書遺言を法務局において保管する制度が創設されました。

4.遺留分に関する見直し

 旧法では遺留分減殺請求権を行使すると減殺請求の対象となった目的物の所有権(共有持分権)は、遺留分権利者に戻った(物権的効力)が、改正相続法では遺留分制度は、遺留分侵害請求権を金銭債権として取り扱うこととされました。


 相続法の改正により、これに応じた税制改正のほか相続税に関する申告実務についても対応が必要となります。具体的な財産評価、税額の計算等については、是非、税理士にご相談願います。



税理士 小林 正俊